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体幹筋トレーニング~McGillのBIG3~

リハビリ

McGillの体幹トレーニングBIG3

今回紹介するのはご存じ脊椎の権威、カナダのUniversity of Waterlooの教授であるStuart McGillが提唱する体幹筋エクササイズのBIG3です。

 

BIG3とは、ある分野における代表的な3つ(人)を総称する言葉です。

例えば特定の大御所お笑い芸人3人を指して「お笑いBIG3」などと使われることもありますね。

有名なところではウェイトトレーニング分野におけるベンチプレス、スクワット、デッドリフトのパワーリフティング三種目などでしょうか。

 

McGillの考えは非常に論理的で明快であり、その多くが参考になるものです。

 

 

McGillは多くの書籍・研究を残していますが(存命です)、その中で語られる体幹筋のトレーニングについて、以下の三つは特に押さえておきたいポイントです。

 

コンパウンド(複合的)に体幹筋を鍛えることを推奨している

ドローインをはじめとした腹横筋エクササイズや多裂筋の単独収縮などといった、体幹トレーニングとして一般的に行われているものについては、その効果や生理機能の点などから否定的な見解を示しています。協調的・複合的に体幹筋が収縮する必要があるとしています。

 

持久力を重要視している

日常生活における収縮形態等から“筋力”というより“持久力”の重要性を説いています。

 

mobilityの獲得が重要である

エクササイズを行うに当たり、必要十分なモビリティの獲得にも重点を置いています。

個人的にもいわゆるmobility firstの原則に則り、各種体幹エクササイズの前にはモビリティドリルとして、Cat-Camelやthoracic-rotationといった脊椎のモビリティエクササイズをおすすめしています。

 

体幹トレーニングの目的

 

「体幹トレーニングを処方する目的は何か。」

これははっきりとさせておく必要があります。

 

筋力の強化、協調的な収縮の獲得、機能不全筋の促通、持久力の向上など様々なことを狙って体幹トレーニングを行うと思いますが、その目的に応じてフォームや強度設定などは大きく異なります。

 

全てのエクササイズは合目的的に行われるべきですから、まずは目的を設定しないことにはエクササイズの処方はできません。

 

↓以下の記事では臨床で非常に多く行われるブリッジ運動について、目的性の点から解説をしています↓

股関節のつまり感の原因と治療・解消法~効果的なブリッジ運動~
股関節前面のつまり感。その病態は骨頭のコントロール不全による股関節の機能的なインピンジメントとも言えるものであり、治療の鍵は大殿筋に有ることが多いと考えています。治療に難渋することも多い病態ですが、適切な運動療法の処方で改善が見込めます。

 

「体幹が大事だから」と、漫然とプランクやバードドッグを処方するのは患者さん、セラピスト両者にとって非常にコストパフォーマンスが悪い方法です。

 

体幹の“何が”“どのように”問題なのかをしっかり把握したうえで、トレーニングをデザインしていきましょう。

 

BIG3エクササイズの解説

①カールアップ

腹筋群、いわゆるanterior-stabilityを向上させるエクササイズです。

“カールアップ”は一般的にはいわゆる“上体起こし”(シットアップ)を指しますが、McGillはこの変法を推奨しています。

一般的な上体起こしは、後方組織の障害や椎間板内圧を高める危険性が指摘されています。

事実、脊椎にかかる圧力の多くは筋肉の収縮によるものですから、椎間板内圧を高める腰椎屈曲位に腹筋の強い収縮を組み合わせた“上体起こし”は椎間板の健康を損なう可能性が非常に高いと言えます。

↓椎間板への負担については以下の記事に詳しく記載してあります↓

Nachemsonナッケムソン椎間板内圧の報告【椎間板ヘルニア】
Nachemson(ナッケムソン)の椎間板内圧についての報告を中心に、椎間板にかかる負担について解説しています。 セラピストには、これらの知識を元に腰椎疾患の患者さんに適切な指導が行えることが求められます。

 

このカールアップ変法は腰椎への負担を最小限に抑えて腹筋群をトレーニングすることができます。

 

方法

①仰向けに寝転がり、片足を伸ばす。

②脊柱のニュートラルな前弯を保てるよう、腰の下に手を入れる。

③脊椎の弯曲を保ったまま頭~肩甲帯を持ち上げる。

カールアップ

この際、クランチのようにおへそを覗き込む(下図:頸椎屈曲)のではなく、あくまで脊椎の弯曲はニュートラルなまま肩あたりまでを持ち上げるのがポイントです。

首が曲がっている✖

難しい動きではありませんが、はじめは腹筋を触知して最大収縮が入っているかを確認してください。

 

伸ばす方の脚は左右交互に行っても、数セットごとに交換しても構いません。

 

②サイドプランク

側腹部を鍛えるエクササイズとして非常にポピュラーなもので、lateral(rotational)stabilityを向上させるエクササイズです。

 

方法

①横向きになり、片側の肘と膝をつきます。

②前額面上で直線となるように身体を持ち上げます。

③姿勢をキープします。

動作中、上側の手は腰に置きますが、対側の肩や胸の前に置いても構いません。(若干負荷が下がります)

脚を伸ばし足部で体を支えれば、より高負荷で実施が可能です。

 

少し負荷が強くなりますが、下側の脚を浮かし、上側の脚のみで身体を支えると前斜走システム(側腹部と対側の内転筋)を協働して働かせるエクササイズとなります。

 

脊椎のシンメトリーを考えると顔もまっすぐに前を向くのが良いと思いますが、首が辛い場合は無理に頭部を起こす必要はありません。

 

頻発するエラーとして、体幹の上げ過ぎor下がり過ぎがあります。

上がり過ぎ

下がり過ぎ

 

また、矢状面上での脊椎の弯曲が保たれているかもチェックしておきましょう。

お腹を突き出していたり、腰が引けていたりするエラーも良く見られます。

 

 

③バードドッグ

こちらも非常にポピュラーなエクササイズで、主に背面筋群を協調して収縮させるposterior-stabilityを向上させるエクササイズになります。

また、後斜走システム(広背筋と対側の大殿筋)の促通と考えればrotational-stabilityと捉えることもできます。

後斜走システムは胸腰筋膜を介し、あらゆる動作において安定性を確保するために機能する他、仙腸関節の安定性にも寄与する重要なユニットです。

 

方法

①脊椎をニュートラルな状態に置く。

※これが患者さんには存外難しいのですが、以下の三点を強調することで上手くポジションをとれるようになります。

・軽く顎を引く

・肩甲骨を軽く寄せる(あくまで軽く)

・お腹を軽く引っ込める(こちらもあくまで軽く)

 

②上肢は母指を上に斜め前へ(理想は外転150°程度)、下肢はまっすぐに後方へ拳上します。

 

上肢を150°外転位とするのは、僧帽筋下部を中心とした肩甲帯安定化に寄与する筋肉を効率よく参加させるためです。水平外転で行うのも良いと思います。

 

下肢を挙上する際、つま先が伸びていると腰椎が反ってしまいがちですので、踵を挙げるように指示すると良いでしょう。

この時、挙上初期でバランスを崩してしまう場合は上肢→下肢の順でゆっくりと拳上するように指示します。

背筋群の機能が向上するに従って上手に行えるようになります。

 

頻発するエラーは腰椎の過前弯、脊椎・骨盤の回旋などでしょうか。

回旋してしまっている

 

時にこれでもかと手足を高く挙げる人もいますが、あまりお勧めできるやり方ではありません。

 

上肢のみ→下肢のみ→上下肢同時の順に難易度が上がります。

段階的にトレーニングしていくのも良いでしょう。

 

余談ですが、片側下肢のみの拳上によって腰部多裂筋のトレーニングとして利用することも多くあります。

下肢のみ

強度設定(セットの組み方)

 

上記3種目の強度設定については、前述の通り日常生活における体幹筋の収縮形態等から“筋力”というより“持久力”に重きを置いたデザインとします。

 

具体的には患者さんの体力に合わせ、10秒前後の等尺性収縮を、全部で8~10セットほど行うのが効果的だと思います。

 

10秒の保持→3秒の休憩→10秒の保持→3秒の休憩→・・・と繰り返していき、10秒のキープが辛くなってきたら一度20秒~30秒程の休憩を入れて目標回数まで動作を繰り返していきます。

こういった限界になったら短時間インターバルをとりレップスを重ねる手法をレストポーズ法と呼びます。

 

また、はじめから10秒の保持→3秒の休憩を1セットとして5セット→20秒休憩→3セット→20秒休憩→2セットなどと、ピラミッドセットを組む方法なども推奨されています。

 

経験則では前者の方が効果は高いですが、無理に姿勢をキープしようとエクササイズが雑になってしまうこともあるため、要注意です。

 

強度を上げる場合、長時間の等尺性収縮は循環動態などを考えるとあまりいい結果を生まないことが推測されますので、動作をキープする秒数はあまり延ばし過ぎず、セット数を増やしていくことをおすすめします。

重錘等での荷重によって負荷を上げることも可能です。(体幹筋の協調を目的の一つとして処方するなら、少しそれとは外れたものになってしまう気がしますが。)

 

純粋に負荷強度を上げたい場合は、これらのエクササイズで体幹筋群の機能を最適化したのちに他のエクササイズを選択していくといいでしょう。

 

 

総論

 

総じて重要なのは“脊椎の生理的な弯曲を保つこと”になります。

 

高強度を追及するエクササイズではありませんから、あくまで正しいフォームで行うことが重要です。

疲労してくるとフォームが崩れがちですので、正しいフォームで動作を完遂できるようインターバルや時間・回数等を調整します。

 

また、運動の処方はmobility firstの原則に則り、適切なモビリティが獲得されたのちに行われるのが理想です。(実際は並行して行うことがほとんどですが)

もちろん正確なフォームで動作が実行できない程のモビリティ不全や絶対的な筋力不足、痛みなどがある場合は、これらのエクササイズの適応とはなりません。

 

結語

 

以上、McGillの推奨する体幹エクササイズを紹介致しました。

今回紹介した体幹エクササイズは患者さんに処方する頻度が非常に高く、いわゆる体幹トレーニングとして老若男女、場合によってはアスリートレベルの患者さんにまで、万能に用いることができる、非常に優れたエクササイズだと思っています。

 

もちろんローカルな部分での障害がある場合などはその治療に注力するべきですが、治療的介入に目途がつき、リハビリ卒業を迎える患者さんに対してホームエクササイズとして処方することも多く、ここにスクワットを加えれば脊椎のトータルヘルスのためのエクササイズとしては十分だと思います。

 

オーソドックスなエクササイズですが、効果は折り紙つきです。

ぜひ患者さんと一緒にトライしてみてください。

 

 

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