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肩関節の可動域制限を治療する

リハビリ

肩関節の可動域制限

肩関節の可動域制限は臨床での遭遇率も高く、日常生活に大きな支障をきたす非常に厄介な症状です。

拘縮、俗に言う凍結肩やフローズンショルダーと呼ばれる状態になってしまうと、食べ物を口に運んだり、顔を洗うことさえままならなくなってしまいます。

Kinetikos

 

肩関節の可動域制限を有する患者さんでは結滞動作が制限されやすいイメージがあるのではないかと思いますが、実際に屈曲→外転・内外旋→結滞動作の順で治っていく患者さんは非常に多く、セラピストなら誰でも

 

「前から挙げるのは大丈夫だけど横からだと痛い、後ろに手が回らない」

 

といった訴えを患者さんから聞いたことがあるのではないかと思います。

 

これにはいくつかの要素が関わっており、それが肩関節機能の改善に大きく関わっています。

 

日常生活での使用頻度

日常生活動作の大半は肩関節屈曲域(前方)で行われます。

伸展域(後方)での日常動作と言えば、結滞を含む更衣や洗体、後ろの物を取ろうとした時くらいでしょうか。

 

一定の組織損傷や炎症の治癒していく過程で漸増的に活動性を上げ、機能を再獲得していく必要性があることは言うに及ばずです。

前述の通り伸展域での活動は屈曲域での活動に比べ圧倒的に少ない。

それによりある意味自然治癒過程ともいえる関節機能の再獲得が遅れる可能性は十分にありそうです。

 

姿勢の変化

肩関節に限った事ではありませんが、有痛疾患は慢性の経過を辿る中で疼痛による屈曲反射が誘発され、屈筋優位の姿勢へと変化していきます。

肩関節障害に関わるところで言えば、肩甲骨のprotract(前方突出)と胸椎の後弯化です。

Posture Medic

 

屈筋優位の機能形態では伸展域での運動が行われるはずもなく、ただでさえ伸展域の活動が少ない肩関節にこのような病態が加わることになりますから、結滞動作をはじめとした伸展域での運動障害が自然と改善されていく可能性はやはり低いと考えられます。

 

もちろん、可動域だけに着目すればある程度の改善は得られていくでしょうが、棘上筋の収縮や肩甲骨の安定化などの機能が適切に改善されているかは甚だ疑問です。

みかけの可動域だけが改善していることが非常に多いように感じます。

 

そういった可動域の改善をもって“治癒”としてしまうのはセラピストとして片手落ちと言わざるを得ません。

棘上筋機能の低下によるインピンジメントに代表される“適切な機能を伴わない関節可動”が、二次的な障害を生むことは広く知られている通りです。

 

胸椎後弯化の弊害

前述の通り、疼痛の慢性化により屈筋が優位となり胸椎の後弯化が起こると肩甲骨の後傾が阻害され、屈曲域での運動においてインピンジメントを引き起こすリスクとなることは諸家の報告にある通りです。

 

胸椎後弯化は前方要素(小胸筋など)の短縮を引き起こし、肩甲骨は前方突出と前傾を呈するようになります。

当然、あらゆる関節機能に制限を引き起こすことになるのですが、この状態になるとただ仰向けに寝ただけでも肩甲骨が床面から浮き上がり、上腕の相対的な伸展を引き起こします。

夜間痛

これは仰臥位で就寝した時の夜間痛などに関わる病態です。

これらについては別途機会に、改めて解説をしたいと思います。

 

 

全身を見る必要性

肩関節は肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節、肩鎖関節、胸鎖関節、脊椎などあらゆる部位が運動に関与しています。

それは即ち代償が効きやすい関節であるということです。

 

特に屈曲運動などは肩甲上腕関節があまり上手く機能しなくても、他関節の代償を用いてなんとか挙げることが出来てしまうものです(もちろん限界はありますが)。

みかけ上の可動域が改善しただけでは、本来の肩関節機能が改善したとは言えないという事になります。

 

協働部位が可動性の不足分を請け負うことで、そこに過剰な負担がかかり、二次的な障害を引き起こすのは想像に難くありません。

 

では肩の機能回復が得られれば、代償部位の負担は自然に低減していくかと言えばそうとも言えず、改めて適切な運動パターンを再学習させてあげる必要があることも多くあります。

慢性の経過を辿るほど、代償運動パターンは学習されていきます。脳血管疾患以外では語られることが少なく、案外見落とされてしまう病態です。

 

月並な言い方になりますが、やはり“全身を見ていく必要がある”という事でしょう。

そのためには厳密な評価や運動連鎖の知識などが必須となります。

 

伸展域の運動

ここまでの話からある程度想像がつくと思いますが、肩関節の可動域改善が得られた患者さんでも、良く見ると伸展域での運動機能はほとんど改善していない患者さんが散見されます。

臨床的には肩甲骨の安定化・コントロールや、棘上筋の収縮をはじめとした骨頭を求心位に保つ能力などが伸展域に持っていった途端に出力しなくなる病態が散見されます。

 

それらの治療はさほど難しくなく、筋特異性の原則に則り“伸展域での機能訓練”を行う事が効果的です。

 

全運動域をみる

肩関節はその可動性の大きさを担保するために、あらゆる可動域において関節機能が働く必要があります。以前お話ししたように、屈曲や外転と言った運動は我々が便宜上設定した平面上の運動方向に過ぎず、関節運動は三次元、全方位で適切に行われる必要があります。

“ROM”を考える~検査・訓練の意義と解釈~
コッドマンのパラドックスが示す通り、生理的な関節運動には回旋や傾斜が伴います。 非常に基本的なスキルであるROM検査・訓練ですが、人体の生理的な運動を理解することで、その意義や方法までが変わってきます。

 

前述の通り適切な機能を有しないまま関節運動を繰り返せば、二次的な障害が引き起こされます。

 

ただ一定の可動域改善のみであれば、極端な話放っておいても良くなることがほとんどです。

その中でそういった機能不全を探索し改善に導くのが我々セラピストの本懐であり、それをもって真の治癒とするべきです。

また、再発予防としても非常に重要な視点になります。

 

愁訴を訴える患者さんや、あと一歩が改善しない患者さんには、あらゆる可動域において改めて評価をしてみることをお勧めします。

前述のように伸展域においてのみ異常が発現するなど、なにかしら解決の糸口が見つかるかもしれません。

 

肩関節機能改善のまとめ

まとめると、肩関節の可動域制限・機能不全に対する理学療法におけるポイントは以下のようになります。

 

伸展域での活動を増やす

病態が複雑化していなければ、意識して後ろにも大きく手を振ってウォーキングをしてもらうだけでも良くなっていくことがあるほどです。

 

全身を見る

胸椎後弯化が最も問題になってくることが多いと思いますが、胸腰椎の伸展、骨盤の前後傾、胸郭の拡大など、まずは運動連鎖的な視点から解釈していくのが分かりやすく、良いのではないかと思います。

以下の書籍は全身的な視点で肩関節の機能障害を捉えるのにお勧めです。

 

 

肩関節は苦手とするセラピストも多い部位ですが、基礎的理解を深めれば改善の得られやすい関節でもあります。

局所に捉われず、少し大きな視点で治療をしてみると案外色々なものが見えてくるものです。

 

↓肩関節についてのお勧め書籍↓

拘縮に対する苦手意識がなくなります。

 

 

参考

Gumina, S. et al :Subacromial space in adult patients with thoracic hyperkyphosis and in healthy volunteers.

Hebert, L.J. et al : Acromio-humeral distance in a seated position in persons with impingement syndrome.

Shiro Imagama. et al : Impact of spinal alignment and back muscle strength on shoulder range of motion in middle-aged and elderly people in a prospective cohort study.

 

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