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仙腸関節テスト・評価まとめ~Stork・Gillet test~

リハビリ

 

今回は仙腸関節の動きについて、その評価の方法と解釈、考え方をお話しします。

Standing flexionテスト

まずは一つ目、Standing flexionテストです。

仙腸関節テスト

方法は簡単です。

①足幅を肩幅か、少し狭め程度に開き、直立位

②検査者は両側のPSISを後方から触知する

③頭方から順に体幹を屈曲してもらう

④左右PSISの動きを比較し、「動き出すのが早い」・「上方への移動量が大きい」側を陽性とする

 

仙腸関節の検査の中でもポピュラーなものの一つです。

形式上Standing flexionテストと呼んでいますが、公称ってあるんでしょうか?
ご存じの方がいらっしゃったら教えてください。

 

座位で行う場合はPiedallu’s sign(test)などと呼ばれ、端座位にて同様の手法で行われます。

 

Standing flexionテストの解釈

名称はさておきこの検査では、PSISの初動と動きの大きさを比較し、「動き出すのが早い」・「上方への移動量が大きい」側を陽性とします。

 

頭方から順に前屈を行うと、その前屈角度に伴って腰椎→仙骨→寛骨と順に運動が起こり、触知している両PSISは上方へ移動します。

PSISが先に動き始めた側は、“仙骨から寛骨へ動きが伝わるのが早い”と解釈でき、それはつまり対側に比べ仙骨と寛骨の間の遊びが少ない=「仙腸関節の可動性が低い」状態を示唆します。

PSISの移動量も同様の解釈が可能で、仙腸関節の可動性が低いほど寛骨が仙骨の動きに追従してしまい、PSISは大きく上方へ移動します。

 

「陽性側は陰性側に比べ、可動性が低い。」

 

こうなると可動性が低い側のモビリゼーションなどをしたくなりますが、あくまで左右を比較した相対的な検査ですので検査結果がそのまま仙腸関節の“緩さ”・“固さ”とはならないのが悩みどころです。

 

一方が正常、一方がhypermobility(過可動性)だったとしても、相対的に可動性の低い正常側が陽性として表出してしまうということです。もちろん他のパターンも考えられます。

この検査ではそのパターンまでを判断することは不可能で、後述の検査や症状の出現状況、アライメントなど他の所見を併せて総合的に判断することが大切です。

「陽性⇒固い⇒モビリゼーション」といった思考過程ではではセラピストとしてあまりに浅薄です。

 

動的検査のポイント

このテストに限った話ではありませんが、あらゆる部位の評価において動作中のランドマークの動きを確認するのは触診の基本技術となります。

代表的なもので言えば、肩甲骨を触知して肩甲上腕リズムを確認する時などです。

 

慣れないうちは検査中、ランドマークの動きを追いきれず見失ってしまう事が間々あります。

そんな時は対象を見失った時点で動きを止めてもらい、改めてそこでランドマークを探しなおしましょう。

最初から最後まで動きを追い続けられなくても、要所で位置が確認できれば大まかな動きは把握することができます。

 

ただ気を付ける必要があるのは、動作中は健患側に大きな差があるにも関わらず、動作終了時には左右の差がほとんどなくなってしまう事があるということです。

例えば肩甲骨の可動不全がある場合などですが、上肢下垂位から拳上120°程度までは健患側の肩甲骨の位置には大きな左右差が見られるものの、拳上最終域付近ではほとんど差がなくなってしまうことがあります。

動作中のランドマークをチェックする際は、開始姿位と最終姿位のみでは正しく評価が行えないことが多いため、要所要所の位置をキチンと確認することが重要と言えます。

 

大切なのは正確に検査ができる技術と、解釈するための知識です。

仙腸関節は耳状面と呼ばれる関節面の形状から複雑な動きを持ち、骨形態の個人差も大きい部位です。

これらの知識を深めていくと、同じテストを行っても得られる情報量が格段に多くなっていきます。

 

Storkテスト・Gilletテスト

 

上図のように、片脚立位時のPSISと仙骨の位置関係をみるこの検査はStorkテストやGilletテストなどと呼ばれ、これもまた比較的ポピュラーな仙腸関節の検査です。

この検査については私が実際に臨床で行っている解釈も交えて解説していきます。

 

仙腸関節の安定化機構

 

まず基礎知識として、仙骨が前傾することをニューテーション(うなずき運動)、後傾することをカウンターニューテーション(起き上がり運動)と呼びます。

ニューテーション カウンターニューテーション

カパンジ

 

仙腸関節は関節の構造上、仙骨のニューテーションによって関節面の適合性が高まり、安定した状態になることが知られています。

俗に言う「締まりの位置/close-packed-position」です。

 

逆に仙骨のカウンターニューテーションによって関節面の適合性は低下し、遊びが大きい「緩みの位置/loose-packed-position」となります。

 

このことから、仙骨がニューテーションした状態を安定した「ロック」、仙骨がカウンターニューテーションした状態を不安定な「アンロック」と呼ぶこともあるようです。

ちなみにこのような関節面の適合性等による構造的安定化機構を“form closure”、殿筋群や胸腰筋膜、多裂筋などの張力による力学的な安定化機構を“force closure”と呼びます。

 

以上は仙骨の動きにフォーカスした解説ですが、臨床においては寛骨の動きを中心に考えることが多くあります。仙骨に対する寛骨の動きは下図のように、

仙腸関節前後傾

temadeporte.blogspot.com/

 

仙骨前傾⇒寛骨後傾

仙骨後傾⇒寛骨前傾

 

となりますから、床反力や筋収縮の影響で寛骨が前後傾することによって相対的な仙骨の前後傾が起こり、ロック・アンロック状態になるという考え方が可能です。

例えばハムストリングスが収縮すると寛骨が後傾するため、相対的な仙骨前傾位となり仙腸関節はロック状態となります。

つまりハムストリングスは仙腸関節をまたぐ筋肉ではないにも関わらず、その安定化機構として働くということです。(もちろん姿位等によっては異なった作用となります)

LD Performance Training

 

実際に仙腸関節の不安定性が疑われる患者さんのハムストリングスを検査してみると出力不全が起こっていることが間々あり、ハムストリングスの促通が症状を改善させることがあります。

 

仙腸関節の役割

 

仙腸関節は下肢と体幹をつなぐ重要な関節であり荷重伝達が大きな役割の一つです。

仙腸関節 荷重伝達

 

例えば立位や歩行時に仙腸関節が不安定な状態では、下肢から伝わる床反力を体幹(仙骨)へ効率よく伝達することができません。

効率の良い運動のために、仙腸関節にはどちらかと言えばガッチリと安定した状態が求められるということです。

 

検査の方法

 

ここでやっと検査の話です。

まずは検査の方法です。

①患者さんには足幅を狭め(そのまま片脚立位ができる程度)にした立位を取ってもらいます。

②検者は後方からS2レベル仙骨陵と検査したい側のPSISを触知します。

 

③左右ともに片脚立位を行い、その際の仙骨とPSISの位置関係を観察します。

 

解釈①:安定性の評価

 

StorkテストやGilletテストなどと呼ばれるこの検査は、片脚立位時のPSISと仙骨の位置関係の変化をみるもので、下肢立脚側・挙上側ともに「PSISが上方に移動」するのを陽性とします。

 

PSISの上方移動は寛骨の前傾を示しており、前述したとおり、それは相対的な仙骨のカウンターニューテーションを表します。

仙腸関節前後傾

temadeporte.blogspot.com/

前述の通り仙腸関節は、仙骨のカウンターニューテーションによって固定性が下がった状態となりますから、この検査の陽性(寛骨の前傾)は仙腸関節のアンロック状態を示すということになります。
先ほど申し上げたように、仙腸関節にはある程度ガッチリと安定した状態が求められますから、この検査の陽性は荷重伝達という仙腸関節の主要な機能が低下している事を示唆します。

 

つまり、この検査は“片脚立位時に適切な荷重伝達が行えるロック状態を保てるか”を見ている検査と言えます。

 

そこには筋収縮や、骨盤の偏移などあらゆる要素が内包されており、総じてこの検査は仙腸関節安定化機構の包括的評価と捉えることができそうです。

 

検査のポイント

 

ただここで考えなければいけないのは、片脚立位の股関節屈曲に伴い、下肢拳上側の寛骨が後傾するということです。

 

一般的には下肢拳上は股関節を90°程度曲げるのが正しいやり方のようですが、目的は前述の通り荷重時の仙腸関節安定性ですので下肢拳上はごくわずかにとどめ、股関節の屈曲による寛骨の動きをできるだけ排除します。

 

そこでこの検査を「仙腸関節安定化機能の評価としてこの検査を行う」場合、足底が床から離れるか離れないか程度にしか脚は挙げません(あくまで私のやり方ですが)。

 

股関節は動かさずに膝関節屈曲によって片脚立位を行ってもらうのも一つの手ですが、ハムストリングスの収縮は前回お話ししたようにロック・アンロックに影響を及ぼすため、手段としてはあまり好ましくないと思います。

 

ここでわざわざ「仙腸関節安定化機能の評価としてこの検査を行う」場合と書いたのは、以下のような解釈でこの検査を行うことも多いからです。

 

解釈②:仙腸関節の動きを評価する

 

ここで私が普段行っている、仙腸関節の可動性検査としての解釈を説明します。

大いに私見を含んだ、臨床経験からの解釈ですので、あくまで「そういう考え方もあるんだ」程度に聞いて頂けると幸いです。

先ほどの方法では、股関節屈曲による寛骨の動きを排除するため、股関節の屈曲は最小限に行うとしました。

この別法では、股関節の屈曲に伴う寛骨の後傾を利用して、仙腸関節の可動性を評価していきます。

方法としては股関節の屈曲角度を70°~90°程度とする以外は同様で、骨指標の動き始めを捉えます。

 

仙腸関節の安定性検査として行う場合は前述の通り遊脚側・立脚側ともに仙骨に対してPSISが上方に移動するのが陽性でした。

この解釈においては、PSISと仙骨の位置関係が変わらないことを陽性とします。

画像のように片脚立位を行うと、下肢拳上側では股関節の屈曲に伴い寛骨の後傾が起こり、仙骨に対しPSISが下方へ移動します。この時、寛骨後傾に制限があるとPSISが仙骨に対し下方へ移動できず、併行して動くことからお互いの位置関係は変わりません。

逆に下肢立脚側では、拳上側の寛骨後傾に続き仙骨も後傾し、PSISに対し仙骨が下方へ移動します。仙骨の後傾=寛骨の相対的前傾ですから、寛骨の前傾制限があるとPSISが仙骨に併行して移動してしまうため、これもやはりお互いの位置関係が変わりません。

 

股関節の純粋な屈曲角度はせいぜい70°程度ですから、あまり曲げすぎても正確な所見が得られません。屈曲角度は70°~90°、骨指標が動き始める程度とします。

筋機能検査として行うわけではないため、壁などに手をついて身体を安定させ筋機能の要素を減らすと良いと思います。

前述の方法とうまく使い分けていきましょう。

 

総じて、前述の仙腸関節安定化機構を検査するという解釈に対し、単純な寛骨の前後傾可動性にフォーカスした解釈と言えると思います。検査の特性上、PSISないし仙骨が動き出す初動を捉える必要があります。

 

まとめ

総じてこの検査をまとめると、

 

・股関節の屈曲角度を最低限にして行えば“仙腸関節安定化機構の検査”

・股関節を指標が動き始める角度まで屈曲させ、初動を捉えれば“仙腸関節の可動性検査”

 

となります。

 

本当に?

色々もっともらしいことを書いておいてこんな事を言うのもなんですが、正直に申し上げると今回紹介した仙腸関節の検査には多くの要素が関わっており、単純な解釈は難しいのかなと考えています。

比較的ポピュラーな検査ではありますが、私の知る限り検査に対する強いエビデンスはなく、実際にちょっと下腹部に力を入れたり重心を前後に動かしたりするだけで結果は容易に変わってきます。

今回紹介した解釈についても突っ込みどころは多く、荷重時の床反力の方向やform closure・force closure、関節面の形状など相互の影響を考え始めるとキリがありません。

 

なにが正しいのかはわかりませんが、これで得られた所見に対する治療が奏功することが多いため、前述のような解釈を用いています。

 

繰り返しですが、完全に私個人の臨床的な経験を含む解釈ですので、あくまで一つの考え方として受け止めて頂けると幸いです。

性格上、あやふやな論理が非常に気に入らないのですが、患者さんが良くなることで自分を慰めています。お詳しい方がいらっしゃれば、是非ご助言頂きたいと思います。

 

結語

残念ながら、セラピストの行う多くのテクニックは科学的に裏付けされたものではありません。

仙腸関節検査に限らず、姿勢や骨盤アライメントと痛みの関係性にも質の高いエビデンスはありません。

それでも多くのセラピストがこの関節に挑み、それぞれの解釈で治療を行い結果を出している。そこにセラピストとしてのジレンマがあります。

 

詳細は以下の記事にも記載していますが、大切なのは科学を求める姿勢を忘れることなく、臨床家としてあらゆる情報から病態を解釈し、治療によってそれを証明していく事であると思っています。

仙腸関節痛の原因~なぜ仙腸関節が痛いのか~
仙腸関節痛の原因について。 仙腸関節の可動性や偏移などについては、多くの解釈や議論があり、そこに科学的な裏付けは多くありません。 関節の構造や可動性・可動域などを知ることでリハビリの展開が変わります。

 

参考:J Orthop Sports Phys Ther. 2002 Sep;32(9):447-60. Relationship between mechanical factors and incidence of low back pain. Nourbakhsh MR1, Arab AM.

 

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