リハビリテーションを考える 理学療法士のブログ

リハビリ勉強会や臨床に役立つ情報などを発信します

スポンサーリンク

“ROM”を考える~検査・訓練の意義と解釈~

リハビリ

コッドマンのパラドックス

コッドマンのパラドックスという言葉があります。コッドマン体操で有名な、あのコッドマンCodmanです。

 

肩関節内外旋0度の上肢下垂位から180°屈曲し、そこから内転によって上肢下垂位に戻してみると、母指が後ろを向き、上肢が外旋しているのが分かると思います。肩屈曲は矢状面上、内転は前額面上の動きで、上肢下垂位での内外旋は水平面上の動きです。

 

コッドマン

Shoulder-Arthritis-Rotator-Cuff-Tears

 

そんなの当り前じゃないかと言われればその通りで、だからどうというわけでもないのですが。

 

難しいことは私も説明しきる自信がないので省略しますが、ここで重要なのは一見真っ直ぐな面上の関節運動にも回旋が伴っているということです。

コッドマンのパラドックス

ResearchGate

 

余談ですがscapular humeral rhythm(肩甲上腕リズム)を名付けたのもコッドマンです(たぶん)。

 

“ROM検査”の功罪

セラピストなら誰もが養成校時代「ROM検査」を学んだ覚えがあると思います。基本軸は○○で移動軸は~~というやつです。

 

ROM肩

http://corawen.com

 

そんな“ROM検査”ですがその実、屈曲や伸展・外転といった運動は、便宜上設定された運動方向でしかありません。

 

本来三次元である人間の関節運動を面上の運動、二次元に落とし込んだ表現であるということです。

ここに“ROM検査”の功罪があります。

 

“ROM検査”は、その関節がどれくらい動くかを「伝える」・「大まかに理解する」という点で非常に優れていますが、臨床で治療や評価にそのまま利用するには難しいことがあります。

 

例えば肩関節について、臨床では肩甲上腕関節の異常を治療対象とすることが多々あります。

肩甲上腕関節の可動域は肩甲骨と上腕骨のなす角度であるべきですから、一般的な肩関節“ROM検査”の基本軸「肩峰から降ろした垂線」では必要な情報は得られません。

肩関節屈曲

円背の患者さんをはじめ、肩関節の可動域検査が必要な患者さんはそもそも肩甲骨の位置異常が起こっていることがほとんどです。

 

にもかかわらず、その3次元的な位置関係を無視した「肩峰から降ろした垂線」が基本軸となっていることは、知識と臨床との間に齟齬を生み出します。

 

経験あるセラピストなら、この齟齬を他の評価や観察から埋め合わせることができるのですが、実習生さんや臨床経験の浅いセラピストはこの“ROM検査”に惑わされ、適当な答えに辿り着くことができません。

 

すなわち我々が学習した肩関節屈曲の“ROM検査”は複合運動としての肩関節屈曲、もっと言えば「腕がどれくらい挙がるか」を示したものに過ぎず、その情報は患者さんを大雑把に把握したり、ADLに関連する情報としては非常に有益ですが、セラピストとしての評価には全く情報が足りません。

 

また、肩関節はscaplar plane上で動くのに適した形にデザインされていますから、“ROM検査”で言う屈曲や外転を基準に治療を展開するのはナンセンスであると考えています。

肩関節 角度

brentbrookbush.com

 

ROM訓練のポイント

ここで冒頭の話に繋がるのですが、人間の関節が純粋に屈曲や外転といった運動をするのは非常に不自然なことであり、関節の形状に鑑みるに回旋を伴った運動を心がけるべきです。

 

この「回旋を伴う」ということを頭の片隅に置いてROM訓練やハンドリングを行うと、案外スムーズに動くことに気が付きます。

 

例えば膝関節は一軸性の関節として屈伸を行います。

単純な動きに見えますが、そこにはスクリューホームムーブメントに代表される回旋運動や下腿の傾斜が内包されます。

つまり正常な膝関節の屈伸運動を獲得するには回旋運動を引き出す必要があるということです。

スクリューホームムーブメント

Tkr by dr. saumya agarwal

 

制限されている運動を構成する要素を一度バラバラに分解してみて、その一つ一つを評価・治療するという考えはあらゆる病態に共通する考えです。
そのためには各関節の生理的な運動を理解する必要があり、それには教科書的な“ROM検査”だけでは全く足りません。

 

他動的なOKC(Open Kinetic Chain)運動だけであればまだしも、そこに荷重や筋収縮、靭帯の緊張、骨形態の破綻などが加わるとどんどんややこしくなってきます。

 

よってまずは、「生理的な運動は必ず回旋を伴う」。これを理解しておきましょう。日々のROM訓練が少しレベルアップするかもしれません。

 

結語

高名な海外の某理学療法士が「患者さんの四肢をpassiveに動かすのを見るだけで、セラピストの腕が分かる」と言っていましたが、こういった生理的な運動を理解しているかどうかと言うところが、そういった所作に出てくるのではないかと思います。

 

本来は上記の話も含めて養成校の教員、ないし検査・評価実習の段階で実習指導担当者がこういった点を指導すべきなのですが、臨床ではあまりに漫然と検査測定が行われており、その解釈にまで思いを巡らせているセラピストは多くありません。
ROMに限らず、日頃何気なく行っている検査もしっかりと中身を考えてみると臨床の大きなヒントになることがあります。我々治療家にとってあらゆる検査は、すべて患者さんを治すために行われるべきです。セラピストとして検査を行うことの意味をもう一度考えてみる必要がありそうです(自戒の念を込めて)。

 

 


前述の通り、一般に行われるROMの概念は「腕がどれくらい挙がるか」といった視点で身体運動を捉えるのには非常に優れた指標で、多職種間での共通言語としての役割は非常に大きいと思います。決して教科書のROM検査を否定しているわけではありません。悪しからず。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
お気軽にフォローください
リハビリ技術
\お役にたちましたらシェアをお願いします/
\気軽にフォローしてください/
スポンサーリンク
All Good Rehabilitation/AGR

コメント