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肩関節可動域制限の原因~後方組織のタイトネス~

リハビリ

 

運動器に携わるセラピストで、肩関節の痛みや可動域制限に関わった事の無い人はいないのではないでしょうか。

症状の出現様式は異なるものの肩関節に何らかのトラブルを抱える患者さんは多く、肩関節をキチンと見ることができるのはセラピストとして必須のスキルであると言えます。

 

今回は肩関節の痛みや可動域制限に大きく関わる後方組織のタイトネスについてお話をします。(厳密には後下方のタイトネスと言った方が正しいのかもしれません)

投球障害の場合などによく語られる病態として、聞いたことのある方も多いと思います。

 

肩関節の構造

肩関節はその大きな可動性を確保するために安定性を欠いた構造を成しており、容易に骨頭が関節軸からズレてしまうことで可動域制限や痛みを引き起こします。

そこで多くの靭帯や筋肉といった組織が受動的・能動的に安定化機構として働いており、ローテーターカフをはじめとした多数の筋収縮によって多方向から上腕骨頭を求心位に安定させています。

その作用は“force couple”と呼ばれ、円滑な関節可動に重要な役割を果たしています。

フォースカップル

McGraw-Hill Medical

肩関節運動時の上腕骨頭と肩甲骨関節窩の位置関係は「臼蓋上腕リズム」と呼ばれ、誰もが知る「肩甲上腕リズム」と並び、適切な肩関節運動に欠かせない要素です。

 

臼蓋上腕リズムの破綻、即ち上腕骨頭と肩甲骨関節窩の位置関係の異常は腱板損傷をはじめとした肩関節障害のリスクとして存在し、多くの場合それは骨頭の前方(前上方)偏移によって起こります。

骨頭が前方に偏移するメカニズムは色々考えられますが、その中でも今回のテーマである後方組織のタイトネスが関与することは非常に多いと感じています。

 

後方組織のタイトネス

肩関節(肩甲上腕関節)は凹凸の法則で言えば凸の法則が当てはまる関節です。つまり上肢を拳上するためには、その角度に応じて上腕骨頭は後方+下方へと転がり・滑りを起こさなければなりません。

この時後方組織のタイトネスが存在すると、あたかもボクシングリングのロープのように上腕骨頭を前方(前上方)へ押し出すように働きかけ(下図)、上肢拳上時の骨頭運動を阻害する要因となります。

オブリゲートトランスレーション Obligate translation

An Evidence-baced Approach to Contracture of the Shoulder

このような後方組織のタイトネスによる骨頭偏移は“Obligate translation”としてHarrymanらによって報告されています。

さらに、肩関節水平内転では後下方の関節包が、結滞動作(伸展+内転+内旋)では後関節包が引き伸ばされることから、これらのタイトネスが水平内転動作や結滞動作にまで影響を及ぼすことは想像に難くありません。

また、Seitzらは肩関節後関節包のタイトネスは肩峰-上腕骨頭間スペースの狭小化に関与していると報告しています。(Seitz AL, et al. Mechanisms of rotator cuff tendinopathy: intrinsic, extrinsic, or both)

 

このように、後方組織のタイトネスは多くの病態に関与することが諸家によって示されています。

ただ、こういった後方組織云々の概念は非常にもっともらしく、納得もできるのですが、臨床的にはどうもそれでは説明のつかない患者さんも散見されます。

可動域や伸張性、骨形態など、こう言うと身も蓋もありませんが「個人差」によって病態と関連する人としない人がいるのだと思います。

 

評価と治療

これら後方組織の評価はわりと単純で、内旋可動域とその際の上腕骨頭の前方移動を見ていくことになります。このとき上肢下垂位のみでなく1st~3rdポジションやscapular planeなど、あらゆるポジションで内旋可動域を評価しておきましょう。

非常に大雑把に言ってしまうと、あらゆる姿位で内旋可動域に制限があり骨頭を後方へ押し込んだ際に抵抗が強い、ないし動かない患者さんは後方組織のタイトネスを有する可能性が高く、その治療が適応になることが非常に多いです。

治療対象となる具体的な後方組織としては、棘下筋や後関節包などになってくると思います。

慢性の経過を辿っている患者さんでは具体的にどの後方組織が原因となっているかの判断がつきにくいことも多く、後方要素をまとめて治療してしまうことも多くあります。

 

例えばSleeper Stretch(スリーパーストレッチ)と呼ばれる下図のストレッチは後方組織のストレッチとして有名です。

Sleeper Stretch(スリーパーストレッチ)

The Sports Physio

確かに一定の効果は得られると思いますが、こと関節包のタイトネスが存在する場合や骨頭の動きを考えるとこれだけでは不十分な気がしています。

 

結語

後方組織のタイトネスは後方組織自体よりも、骨頭偏移による前上方の支持組織へのストレスや、肩峰-上腕骨頭間スペースの狭小によるインピンジメントを症状として訴えることが多いという点に注意が必要です。

肩関節インピンジメント

Exercise Biology

症状を訴える部位から、一見すると前方・上方要素に障害があるように見えるためこういった病態を知識として持っておくのは非常に大切だと思います。

 

 

林典雄先生執筆の”整形外科運動療法ナビゲーション”

臼蓋上腕リズム等について掲載されており、圧倒的な見易さ、わかりやすさでお勧めです。

 

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