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【PELD(PED)・SELD】腰椎椎間板ヘルニアの内視鏡手術

一般向け

2018年11月28日放送、【予約殺到!スゴ腕の専門外来スペシャル】にて私のBOSSである伊藤全哉院長(あいちせぼね病院)がSELDを紹介しました!

腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡手術

 

私の勤務する病院は脊椎専門で、特にMISS(minimally invasive spine surgery)=最小侵襲脊椎手術と呼ばれる内視鏡を用いた非常に小さい侵襲(傷)で行う手術に特化しており、手前味噌ながら脊椎の手術件数は国内トップクラスを誇っています。手術
おかげ様で私もMISS後の患者さんを日本一多く見ている理学療法士の一人となっていますが、ここでは腰椎椎間板ヘルニアに対する最小侵襲脊椎手術の手術方法について個人的な所感を交えて紹介していきます。

手術を理解する一助となれば幸いです。

 

PELD(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy)

 

PELD手術は“経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術”と呼ばれる腰椎椎間板ヘルニアに対する手術法です。Lを省いてPEDとも呼ばれます。

難しい名前ですが、要は「ちょっと皮膚を切るだけで内視鏡を使ってヘルニアをとっちゃうよ」という名称です。

摘出したヘルニア

摘出したヘルニア

内視鏡とは人体内部を観察するために用いる非常に小型のカメラのことで、多くの検査や治療に使用されています。ヘルニアよりむしろ胃カメラやがん治療などの用途が有名かもしれません。

 

どんな手術?

手術の内容自体は単純で、筋肉や骨の隙間を縫うように筒を入れ、その筒を通ってヘルニアを取ってこようというものです。

6㎜~の筒にカメラや鉗子(ヘルニアをつまんでくるペンチ)、レーザーなどを通すことで、周りの組織を傷つけずにヘルニアを摘出したり、レーザーで焼いたりすることが可能です。

指より細い筒を通す

指より細い筒を通す

 

以下の動画は日本語ではありませんが、画像だけでも手術のイメージがある程度わかると思います。

 

 

 

メリット

PELD手術のメリットをまとめると以下の通りです。

 

①傷口が小さく済む(1㎝以下)

1㎝以下の傷で行われるPELDは術後の痛みが少なく、傷跡も最小限で済みます。

主観ですが、言われなければわからない程度まできれいになっている人も見えます。

手術直後の傷口

手術直後の傷口

②筋肉や骨などへのダメージが最小限である

術後の痛みや後遺症を残す可能性は低くなりますし、術後安静期間や入院も短く済みます。

術後の安静によって足腰が弱ってしまう心配をされる高齢の患者さんや、仕事が長期間休めない方などにとっては非常に優れた利点です。

スポーツへの復帰も従来の手術に比べて非常に早く、アスリートや高校生競技者において6~8週間での競技復帰の報告がなされています。

老若男女、早期の競技復帰が望まれるスポーツ選手にまで非常に有用なメリットと言えます。

③局所麻酔で手術が可能

高齢の患者さんにとって、全身麻酔はそれだけで大きなリスクとなることがあります。

局所麻酔で行えるPELDは麻酔によるリスクが非常に小さく済みますので、実際に90歳代の患者さんでもPELD手術を受けられる方がいます。

麻酔

デメリット

さて、気になるデメリットですが以下が挙げられます。

 

①適応とならないヘルニアがある。

非常に小さな傷で手術をする方法ですから、あまりに大きなヘルニアや、広範囲に広がったヘルニアなどは適応とならないことがあります。

また、骨などが邪魔をする場合もPELD手術では困難となることがあります。

これらの弱点は手術機器の進歩によりある程度克服されていますが、やはり限界はあるようです。

骨のぐらつきがあり器具で固定をする必要がある場合などもPELD手術の適応にはなりません。

②受けられる施設が少ない

デメリットというものではないかもしれませんが、やはりPELD手術が受けられる施設は限られてきます。

従来の手術法とは異なる手技であるため、医師が技術を習得するのにも時間がかかります。

十数年前の黎明期に比べればかなり広まったようには思いますが、どこでも受けられるというものではありません。

 

SELD(Sacral Epiduroscopic Laser Decompression)

 

SELD手術は“仙骨硬膜外内視鏡下レーザー減圧術”と呼ばれる、同じく腰椎椎間板ヘルニアに対する手術法です。

仙骨硬膜外というのは、SELDで内視鏡カメラを挿入する神経の通り道のことで、「神経の通り道に内視鏡カメラを通してレーザーでヘルニアを焼いちゃおう」という名称です。

bandospine

bandospine

実際はレーザーで焼く以外に、PELDと同じように鉗子でヘルニアを摘出する操作も行います。

SELDはPELDと比べても非常に新しい手術法で、一部の医療機関を除き国内ではまだほとんど行われていません。

PELDよりもさらに小さい傷口で行われるSELDは、筋肉や骨をほとんど傷つけることなくヘルニアを治療することができる画期的な手術です。

 

どんな手術?

EuroPainClinics

EuroPainClinics

PELD手術では腰を数ミリ切開して内視鏡を刺入しましたが、SELDでは仙骨部(お尻の上)から極細の内視鏡を刺入します。

その傷口はわずか3㎜程度と、驚くほど小さなものとなっており仙骨部、いわゆる尾てい骨の上から背骨の中の隙間を通り、目的のヘルニアまで内視鏡を進めていきます。

内視鏡がヘルニアまで到達したら、レーザーを使ってヘルニアを焼いたり鉗子を使ってヘルニアを摘出したりと、ここでの操作はPELDと似ています。

 

以下の動画は日本語ではありませんが、画像だけでも手術のイメージがある程度わかると思います。

実は韓国の脊椎内視鏡手術はかなり進んでいるのです。

 

 

内視鏡カメラをはじめ、近年の手術機器の進歩により可能となった手術です。

たしかに内視鏡カメラの画像も以前に比べ非常に鮮明ですし、わずか1㎜程の驚くほど小さな機器が使用されています。

 

SELDのメリットとデメリット

SELDはPELD以上に身体への負担が少ない手術です。

必然的にメリットとデメリットも似通ったものになりますが、PELD以上にヘルニアの状態を選ぶ手術ですので、一定以上の大きさのヘルニアの場合や、骨の影響がある場合などはやはり適応にはなりません。

さらに前述の通り、国内では発展途上とも言える手術ですので、SELDが受けられる医療機関はごくわずかです。

術後のリハビリ

 

リハビリについては、筋肉をはじめとした組織への侵襲が小さいことから「PELD・SELDを受けたからリハビリをしなければいけない」ということはなく、実際に私の勤務する病院では、術後にリハビリを行う方は多くありません。(そもそもリハビリをやる暇もなく退院してしまいます)

私はリハビリ畑の人間ですから少し寂しい気もしますが…。

リハビリ

ただ、足の麻痺があったり、もともと体力が弱っている方などはその限りではありませんし、そもそもヘルニアを発症する方は柔軟性や筋力、姿勢などに問題がある場合が多いので、リハビリとしてはそういった点にアプローチをしていき、再発や新たな腰部疾患の発症を予防していくことが重要な役割であると考えています。

例え手術でヘルニアが治っても手術前と同じ身体で同じような生活を送っていたのでは、またヘルニアになってしまう可能性が高く、腰に負担をかけない身体の使い方や生活の見直し、十分な筋力・柔軟性などの獲得が必須と言えます。

 

腰に負担をかけずに腹筋や背筋を鍛える方法は以下の記事にまとめてあります。実際に私がリハビリで指導している内容です。

【腰痛予防・ヘルニア】腰痛予防体操と腹筋・背筋【ストレッチ資料あり】
腰痛予防・改善のための体操の方法を解説しています。 腹筋・背筋といったいわゆる体幹のトレーニングと柔軟体操(ストレッチ)を記載しました。 資料のダウンロードも可能です。 【予約殺到!スゴ腕の専門外来スペシャル】で紹介したカールアップも記載してあります。

結語

実際の手術風景

実際の手術風景

以上、腰椎椎間板ヘルニアの最小侵襲手術について紹介しました。

椎間板ヘルニアは自然治癒が期待できる疾患ですから、無理に早期に手術を行う必要はありません。

ただ、症状があまりに激烈で耐え難い場合や、足を触ってもわからないという感覚麻痺、力が入らなくなる運動麻痺、尿が出ない・漏れてしまうなどの膀胱・直腸障害がある場合などはできるだけ早期の手術が望ましいと言えます。

 

冒頭にも申し上げた通り、多くの術後患者さんを拝見していますが、侵襲が小さいことは本当に素晴らしいことだと実感しています。

従来の手術法(いわゆるラブ法)は少なくとも5-6cmの切開が必要で、筋肉や靭帯、骨への一定のダメージが避けられませんでした。

そこから3-4㎝の切開で行われる顕微鏡手術(MD法)、2㎝程度の切開である内視鏡手術(MED法)、そして今回紹介した1㎝以下の切開で可能な新しい内視鏡手術と、技術の進歩に合わせ低侵襲な手術法が開発されています。

手術

いざ「手術をしましょう!」となってもA医師は「PELD手術で」と言うかもしれませんし、B医師は「従来の手術法式で」と言うかもしれません。

それぞれの手術に長所と短所が存在し、なにが正解とは言えませんが、手術をする医師によっても術式を決定する方針が異なる場合があります。

裏話的なところでは、医師にも得手不得手や好き嫌いがあったり、病院の方針があったりなど様々な要因が関わってきます。

正常なMRI

MRI画像

同じ腰椎椎間板ヘルニアであっても、症状、ヘルニアの程度、持病、仕事や家庭での役割、金銭面など、患者さんごとにバックグラウンドは千差万別です。

一概にどの手術が一番優れているとは言えませんので、実際に手術を受ける際には経験豊富な専門医の受診が望ましく、どの手術法が適しているのか、そもそも手術が必要なのか、十分な説明を聞いて納得した上で治療方針を決定するのが良いでしょう。

この記事がその一助となれば幸いです。

 

参考

Yukoh Ohara, et al . : Percutaneous Endoscopic Lumber Discectomy:Comprehending the Present and Proceeding Towards the Future.Spinal Surgery 30(2) 152-158.2016
Sairyo, K., Dezawa, A., et al . : Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy for Athletes. J. Spine, S5:006, 2013
Yuki Okada, et al . :Percutaneous endoscopic lumbar discectomy(PED)for high school athletes. 四国医誌 70巻5,6号DECEMBER25,2014

 

腹筋や背筋を鍛える方法が以下の記事にまとめてあります。実際に私がリハビリで指導している内容です。

【腰痛予防・ヘルニア】腰痛予防体操と腹筋・背筋【ストレッチ資料あり】
腰痛予防・改善のための体操の方法を解説しています。 腹筋・背筋といったいわゆる体幹のトレーニングと柔軟体操(ストレッチ)を記載しました。 資料のダウンロードも可能です。 【予約殺到!スゴ腕の専門外来スペシャル】で紹介したカールアップも記載してあります。

 

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コメント

  1. 藤原聖二 より:

    14年前に内視鏡での腰椎ヘルニアの手術を受け、良好に過ごしてきましたが昨年7月に突然臀部に異変痛みを感じて坐骨神経痛が出ました。現在、痛み止めで対応していますが、酷いときには、歩くのも疼痛のため、厳しくなる時があります。PELD手術を考えていますが主治医が言われるには、1度手術をしているので神経の癒着が考えられ、同手術を行っても良好は結果が得られないかもしれないとのことです。とにかくやってみなければわからないとのことです。もし癒着が酷い場合には後日背骨を削る従来の手術を行い、骨を削って弱くなった場合にボルトで補強する手術(3週間)が必要とのことです。癒着がある場合何パーセントの確率で手術は成功するものでしょうか?データー等あれば教えていただけませんか?

    • 藤原様

      癒着がある場合の成功率について確たるデータはございませんが、確かに手術歴のある方の手術は、癒着や瘢痕組織によって難易度が上がります。十分にヘルニアが摘出出来なかっただけならまだしも、場合によっては癒着を剥がす際に神経にダメージを与える可能性があります。とはいえ、上手くヘルニアを摘出できることももちろんありますし、癒着部位以外の操作によって神経へのストレスを減らし、症状を改善できることもございます。
      結局、「実際にやってみないとわからない」となってしまうのです。

      主治医の先生は安易に内視鏡手術を勧めるのではなく、その限界についてもお話されておりますので、十分にお話を伺って納得の上で手術を受けられるのが良いかと思います。