リハビリテーションを考える 理学療法士のブログ

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重心を把握しリハビリに応用する

リハビリ

 

今回はセミナーで質問を受けた重心について書いていきます。

重心の位置、重心線を理解する

まずは教科書の復習です。

 

・上半身重心の位置

第7~8胸椎部 剣状突起(Th9)

・下半身重心の位置

大腿長の1/2~上1/3の間の点

・身体重心の位置

上半身重心と下半身重心の中点

 

多少の個人差はありますが、概ね上記のようになります。

さらに上・下半身重心の中点である“身体重心”を通る床への垂線が重心線です。

これが支持基底面内におさまっていれば、比較的安定した姿勢を保つことができます。

ご如才ないことと思いますが、重心線のideal(理想)は矢状面上で耳垂-肩峰-大転子-膝蓋骨後方-外果前方を貫いていることでした。

 

つまりその人の重心位置(重心線)を把握するには、上・下半身の位置関係をみれば良いということになります。

 

重心を評価する意味

 

重心位置・重心線が捉えられると、各関節との関係から関節にかかる力学的負荷=メカニカルストレスが推測できるようになります。

重心線から離れた関節ほど回転モーメントは大きくなり、関節にかかる力学的負荷は大きくなります。

 

 

例えば上の図ですが、左のidealに比べ右のsway-back姿勢は胸椎が後方、股関節が前方へ偏移しています。

つまり胸椎では屈曲モーメント、股関節では伸展モーメントが大きくなっているということです。

 

例えばスクワットでは「膝をつま先より前に出さないように」と指導されますが、これは言い換えると「膝関節が“重心線の落ちる足底部”より前に大きく逸脱しないようにしなさい」ということになります。

膝関節が重心線より前方にあるほど膝を屈曲させるモーメントは大きくなり、屈曲角度に応じて関節構成要素への剪断力が大きくなるのは、想像に難くないと思います。

 

 

余談ですが、昨今のフィットネスブームからスクワットの「膝‐つま先議論」が盛んに行われています。

主にネットの記事などで曲解した解釈が多く見られますので、これについてはいずれお話できればと思います。

 

動作中の重心位置

 

静止したスタティックな重心(≒姿勢・アライメント)を把握するのはある程度できるかと思いますが、往々にして問題となる“動作中”の重心位置を見極めるには少し訓練が必要です。

 

例え動作中であっても基本は同じで、上下半身の位置関係から重心位置を推察します。

上半身と下半身がどのように配置されており、その重心の中点はどこかを考えることで重心位置を把握し、前回お話ししたようにストレスのかかる部位・関節への回転モーメントなどを推測することができるようになります。

臨床的には痛みや異常運動が出現する際の重心位置を把握することで、それらの原因を推測することができそうです。

あとはそれを繰り返して一目見て感覚的に理解できるところまで落とし込みましょう。

 

俗に運動神経が良いと言われる人たちは、この重心を捉える感覚が優れていることが多いように思います。

自分の姿勢をコントロールすることも、人の重心を捉えることも、とても上手に行います。

おそらく身体イメージが優れており、ここに力が加わるとこう動くというのを感覚的に理解しているのだと思います。

センスというやつでしょうか。

自分のみならず、人の重心や力の方向なども感覚的に把握できるので、あまり経験のないセラピストや学生さんでも一見して“なんとなく”悪い所を言い当てたり、上手にハンドリングしたりします。

 

例えば私はそこら辺の感覚が皆無ですが、ある程度の経験と練習でとりあえずは概ね把握できるようになりますので安心してください。

ただ、(重心に限ったことではありませんが)それがどういったものなのかを理解して臨床を繰り返すのと、ただ漠然と行っているのとでは上達の度合いにも大きな差が生まれるでしょう。

 

動画を撮影する

 

とは言っても、刻々と姿勢が変化する動作の中でそれを捉えることはやはり難しい。

そこはこのご時世ですから、文明の利器を大いに活用しましょう。

ズバリ動画撮影ですね。

 

今はスロー撮影や連続写真もアプリで手軽に撮影できますし、スマホでもタブレットでも、どんどん活用していけばいいと思います。

いずれ精度の高い姿勢・動作分析のアプリもできてくるでしょう。

話題のZOZOスーツなどはその先駆けとなっていると思います。

 

スピード感のあるスポーツ動作などを見るのはやはり難しいものですが、そこでも動画撮影は力を発揮します。

 

そんな心強い動画撮影ですが、「学生じゃあるまいし、わざわざ撮影しないと動作分析ができないなんて…」となんとなく憚られてしまう方もいらっしゃるのではないかと思いますが、その真価は患者さんへのフィードバックにあります。

上手く利用すれば患者さんが自らの動作を見ながら「ここがこうなっているからここに負担がかかる」というのを視覚的に理解でき、説得力が違います。

 

また、運動学習に視覚情報が重要であることはご存じの通りで、スポーツ動作などに限らず、患者さんと積極的に動画を共有していくと良いと思います。

動作・姿勢指導を生業とする我々セラピストにとって非常に大きな武器と言えます。

 

重心位置を把握するメリット

 

動作の中で変化し続ける重心の位置を一目見て把握できるようになると身体に加わるストレスが推測できるようになり、トップダウン評価の精度が向上します。

 

また、重心位置の把握が上手くなると副次的に介助やハンドリングも自然と上手になってきます。良いこと尽くめですね。

 

上下半身の位置関係から重心位置が決定されるということは、逆説的ですが上下半身を分離・協調して自在に動かせるようになれば重心のコントロールができるようになるということが言えると思います。

例えば立ち上がり動作で重心の前方移動が出来ず、お尻をついてしまう患者さんを想像してみてください。どうやら上・下半身の分離・協調を訓練することには大いに意味がありそうです。

 

Chair rise strategies in older adults with functional limitations

 

具体的な方法論が難しい領域のため、漠然とした内容となってしまいましたが、いずれ参考までに私自身の見方を紹介してみようと思います。

 

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