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肩関節外旋のROM制限~原因と治療~【烏口上腕靭帯・小胸筋】

小胸筋・CHL リハビリ

 

肩関節の外旋のROM制限

 

今回は、肩関節周囲炎や腱板損傷の患者さんに頻発する「肩関節外旋のROM制限」についてお話していきます。

後方組織のタイトネスによる内旋制限については以前の記事をご覧ください

肩関節可動域制限の原因~後方組織のタイトネス~
肩関節の可動域制限の原因となる後方組織のタイトネス(PST)について説明しています。 内旋制限を中心に評価を行い、臼蓋上腕リズムをはじめとした骨頭の運動異常を修正することが大切です。

 

肩関節外旋制限

 

肩関節の外旋制限は肩関節周囲炎や腱板損傷などに続発する症候として非常に多くみられ、ADL上の大きな問題となるのは周知の通りです。

肩関節周囲炎

McKinley-Family-Chiropractic

 

他にも胸椎の伸展可動性などにも大きく関わってくることから、背部痛や姿勢への影響も計り知れません。

その原因としては、肩関節の内旋筋の緊張や癒着をはじめとしたあらゆる病態が考えられますが、以下に説明するような病態が非常に多い印象があります。

 

腱板疎部と烏口上腕靭帯

腱板疎部

肩関節は、いわゆるローテーターカフ、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋が巻きつくように板状の組織をなして存在しています。

それらの筋肉たちが個別に、あるいは共働して適切なタイミングで収縮することで上腕骨頭を求心位に保ち、大きな可動性を持つ肩関節に一定の安定性をもたらしています。

 

そんな肩関節構造ですが、上方を覆う棘上筋と前方を覆う肩甲下筋との間隙部は腱板組織が薄い、もしくは存在しないことから“腱板疎部”と呼ばれています。

腱板疎部(Rotator interval)

文字通り腱板組織が“疎”である部分ですが、そのままではそこだけが構造的な脆弱性を呈してしまいます。

そんな腱板疎部を補強するかのように存在する組織、それが“烏口上腕靭帯(CHL)”であり、肩関節外旋制限の原因となる主な組織のひとつです。

 

烏口上腕靭帯

烏口上腕靭帯(Coracohumeral ligament)

 

烏口上腕靭帯

烏口上腕靭帯は烏口突起から上腕骨に付着し、肩関節の前方を覆っています。

伸張性や滑走性の低下によって外旋制限(特に1stポジション)を引き起こすのは走行を見れば一目瞭然ですが、それ以外にも特筆すべき点として以下のような特徴を持ちます。

 

①疎性結合組織が豊富である

②小胸筋と組織結合をもつ

 

各々解説していきます。

 

①疎性結合組織が豊富

靭帯は本来、血管や受容器に乏しく、あまり徒手療法の対象となることがない組織です。

しかし、こと肩関節周囲の靭帯に関しては疎性結合組織が豊富で、関節包に近い組織学的特性を持つことが多いといわれています。

実際に解剖で烏口上腕靭帯を見てみると、関節包がそのまま靭帯化して上腕骨へ伸びているように感じられます。(あくまで主観ですが)

 

つまり他の靭帯に比べ伸張性に富むということであり、それは伸張性の低下による可動域制限を引き起こす可能性を示唆します。

 

②小胸筋と組織結合をもつ

烏口上腕靭帯は近接する小胸筋と組織的な結合を持ちます。(小胸筋の筋組織が烏口上腕靭帯に入り込んでいるイメージです)

小胸筋・CHL

 

筋組織を内包するということは、受容体が存在するということであり、各種物理刺激を受容する特徴を持つということになります。

それはつまり徒手療法による間接的な治療効果が得られる組織であるということに他なりません。

どうやら烏口上腕靭帯の正常なテンションを得るためには小胸筋の緊張等を取り除いておく必要がありそうです。

 

評価

 

前述の通り、烏口上腕靭帯の伸張性の低下は肩関節外旋の制限(特に1stポジション)として表出してきます。

外旋可動域とあわせて、伸張位での烏口突起下の圧痛を確認しておくと良いでしょう。

烏口突起下での圧痛

烏口突起下での圧痛

小胸筋の関与を確かめるためには肩甲骨と上腕骨のアライメントをチェックするのが簡便です。

小胸筋と烏口上腕靭帯の伸張性低下は肩甲骨の前傾・外転偏位を引き起こし、上腕骨は内旋・前方突出の偏位が見られることが多いはずです。

 

仰臥位で左右の肩甲骨の高さを比較して顕著な左右差がある場合は、小胸筋の関与があることが多い印象です。(体感では9割方)

 

仰臥位での肩甲骨位置

仰臥位での肩甲骨位置

前述の通り、小胸筋は烏口上腕靭帯に影響を及ぼすことで外旋可動域を制限する可能性がありますから、きちんと正常化しておくべきでしょう。

余談ですが、このアライメント偏位は肩関節周囲炎の夜間痛にも大きく関わることがあります。詳細は以下の記事で解説しています。

肩関節周囲炎における夜間痛の原因と治療
肩関節周囲炎の症状として患者さんを苦しめる夜間痛。 その原因と評価、治療について解説しています。

 

また、上肢拳上時に肩甲骨の後傾が不足している場合なども小胸筋の過緊張が疑われます。

これについては上肢拳上にあわせて肩甲骨を後傾方向に介助し、症状や挙がりやすさの変化を聞くことで容易に確認ができます。

 

治療

 

一通りの評価が終わったら、引っかかってきたものを治療していきましょう。

烏口上腕靭帯の治療

個人的には烏口上腕靭帯については伸張性や滑走性の改善として、ストレッチと滑走エクササイズを行うことが多いです。

 

 

 

ストレッチ

その走行から、烏口上腕靭帯は伸展+内転+外旋で最もストレッチされることがわかります。

経験則ですが、特に最大外旋位+内転を強調すると反応が良い印象です。

烏口上腕靭帯のストレッチ

烏口上腕靭帯のストレッチ

 

滑走性の治療

ストレッチにより烏口上腕靭帯の伸張性を引き出したら、隣接組織との滑走性を改善させておくと良いことが多いと思います。

具体的には肩甲下筋-烏口上腕靭帯-三角筋の癒着です。

 

烏口上腕靭帯のリリース

烏口上腕靭帯のリリース

 

①最大外旋位にて烏口上腕靭帯を伸張

②最大外旋位固定のまま三角筋or肩甲下筋を収縮させ(肩屈曲or肩内旋)滑走性を引き出す

 

小胸筋の治療

小胸筋についてはストレッチや肩甲骨運動による反復収縮を用いることが多いですが、可能ならば大胸筋をかき分けて触っていくのも良いと思います。

大胸筋・小胸筋

大胸筋・小胸筋

 

以下は一例ですが、肩甲骨と胸郭をつなぐ筋肉ですから、ストレッチ等には少しコツがいります。うまく行えればキチンと即時効果が得られます。いかに肩甲骨(烏口突起)と胸郭の距離を離すかを考えて行いましょう。

小胸筋のストレッチ

小胸筋のストレッチ

 

結語

 

以上、肩関節の外旋制限と烏口上腕靭帯・小胸筋の関係を解説しました。

外旋制限はADLと直結し、姿勢や夜間痛とも関連する障害ですから、早期の改善によって以後のリハビリを円滑に進めていきたいところです。

 

 

 

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